ハイドン

オーストリアの作曲家としてより、ほとんど英国お抱え作曲家としてのほうが有名なハイドン
 ハイドンの曲には、奇妙な音の移り変わりや唐突に飛躍する展開があって、聴いているほうは不意を着かれるが、あれは、単なる悪戯ごごろで挿入したものではないらしい。
 ハンガリアの裕福な公爵家に宮廷音楽師の子供として、呱呱の声を上げた彼は、宮廷生活の中の、オペラや演劇、舞踏会、花火ばかりでなく、兵士の演技というものに魅了されて育ったらしい。軍隊の指揮官が相手の意表をつく作戦に出ると同じ基準で、兵士の軍楽隊の音楽も奏でられた。そういう環境の下で育った彼であるだけに、交響曲第94番「驚愕」に代表されるような、数奇な音楽が紡ぎ出されたのである。